ICT利活用による優良事例や、地域社会の発展に繋がる取組等を表彰する「滋賀ICT大賞(旧称 滋賀Web大賞)」を開催してきました。

今年度はこれまでの募集スタイルを変え、「デジタルを活用した地域課題解決事例選」として、県内の様々な取組事例を募集したところ、15件のエントリーをいただきました。これらのエントリーに対して、当事例選の実施要綱に基づき厳正な審査を行った結果、「コロナに負けない地域×ICT事例」10選が選ばれました。

このページではその10選についてご紹介します。審査員や実施要綱については、以下のページをご覧ください。

地域コミュニティのつながりをオンラインで補完する

LINEグループの活用による、PTA運営のリモート化・ペーパーレス化

大津市立膳所小学校PTA
http://www.otsu.ed.jp/zeze/recruit.html

大津市立膳所小学校PTAでは、令和元年度までは毎月小学校に集まって役員等による会議を開催していたところ、コロナの拡大によって学校に集まることが困難となり、各種行事も中止となってしまいました。

そこで、連絡や情報共有、意思決定について、原則LINEグループを使って行うことに。学校や保護者との様々な試行錯誤を経て、運営方法をブラッシュアップしていきました。この試みによって、時間や場所に縛られない役員等の意見交換が可能となり、PTAの意思決定のプロセスも可視化されるようになりました。

審査員のコメント

関係者の間で使い慣れているツールをうまく活用している点がポイントだと思いました。会則の整理など、デジタルを前提にした様々な改革ができた点も素晴らしく、PTAという滋賀県全域にある組織の取組みとして、今後の普及が見込まれます。

LINEを活用した学区情報のタイムリーな情報伝達

山田学区まちづくり協議会
https://lin.ee/lowGnRh

外出自粛やまちづくりセンターの休館が続くなか、山田まちづくり協議会ではコロナ禍ならではのタイムリーな情報伝達に対応しようと、従来の紙ベースによる回覧や広報誌の編集・発信方法を見直し、LINEビジネスアプリの導入を始めました。

個人単位でプッシュに学区情報を届けられるようになったことで、働きに出ている若い世代や家族全員が目にするようになったほか、アクセスログやアンケート機能を用いて、すぐに登録者の興味関心を分析できるようになったことで、広報誌の内容だけでなく、まちづくり協議会の活動にも住民の声を反映させやすくなりました。

審査員のコメント

反対意見があったなか、それでもまずはやってみて、アンケートやアクセスログなどを用いて現状を分析・修正しながら施策を進めていた点が素晴らしいと思いました。また、まちづくり協議会という公共的な組織での公式LINEは珍しく、他の地域自治組織に広がる可能性を感じます。

コロナ禍で強固になった、オンラインによる子育て支援のつながり

NPO法人Moms fun「近江八幡市親子応援プロジェクト『ぱぴぷぺぽ』」
https://www.facebook.com/Momsfun

コミュニティセンター等の公共施設を拠点として活動していた民間の子育て支援団体が、緊急事態宣言の発令に伴い活動できなくなったことで、ママたちの相談機会が失われてしまいました。

そこで市内の子育て支援団体とNPO法人Moms funが中心となって「近江八幡市親子応援プロジェクト『ぱぴぷぺぽ』」を立ち上げ、オンラインと対面の併用による定例座談会や、子育て支援団体間の連絡網としてのLINEグループ・公式LINEアカウントを設置。コロナ禍をきっかけに使い始めたオンラインツールによって子育て支援団体間のコミュニケーションが補完され、これまで以上に積極的な交流が行われるようになりました。

審査員のコメント

若い人といってもICTスキルの高くない方もいる中で、専門性の高い人とつながり、技術的な点を克服されていく様子が伝わりました。関係者が増えるに従って大変ではあったと思いますが、その分協力者も増えてきたのだろうと思います。

見守りボタンとLINEグループの導入による、地域の見守りコミュニティづくり

一般社団法人やす地域共生社会推進協会
https://oslead.wixsite.com/yasuchikyou/iot

高齢化が進む近江富士団地で、コロナ禍による高齢者の外出減少によって対面での安否確認が一層困難になったことを受けて、見守る側にLINEのグループを作り、そこに見守られる側がスマホを操作しなくても、ボタン型IoTデバイスを用いて安否情報を送信できるシステムを導入しました。

導入によって、これまでなかった地域の見守りLINEグループが作られるだけでなく、見守られる側の高齢者の皆さんも、ICTの面白さに気づき、スマホを購入してそのLINEグループに自ら参加するようになりました。

審査員のコメント

高齢者がスマホで安心を確保している良い取組みで、地道に段階を踏んで広げられています。高齢者でも誰でも使いやすいツールの模索に期待しています。

 

みんなの力で、便利で楽しいことを実現する

Facebookグループで楽しく共有して拡散しあう、県内テイクアウト情報

株式会社しがトコ「【応援】滋賀テイクアウト情報!」
https://www.facebook.com/groups/236183010838963/

緊急事態宣言で飲食店の自粛が相次ぎ、ネガティブな情報もSNSで飛び交うなか、FacebookやTwitterなどで県内のファンを集めるウェブメディア「しがトコ」が、「こんなときだからこそ、美味しい情報を共有しあおう」と、県内飲食店が提供するテイクアウト情報を、ユーザーが集めてるFacebookグループ「【応援】滋賀テイクアウト情報!」を開設しました。

敢えてメディアがセレクトした情報でなく、自薦他薦問わずに投稿できるプラットフォームとして運用。集約された情報は第三者が自由に活用してよいルールとしたことで、飲食店だけでなく、一般の人も気軽に参加し、約5,500人もの人々が双方向で発信しあえるコミュニティとなりました。またこのFacebookグループの情報を活用して、第三者がエリア特化のまとめサイトを作る動きにも発展しました。

審査員のコメント

自然発生的でありながら、自社のリソースをうまく活かし、大規模なFBグループを作り上げ、地域の飲食店に寄与した点が素晴らしいと思いました。さらに、集まった情報を二次利用OKにするという「緩い仕組み」がとてもユニークであり、地域への波及効果が高いと感じました。

子どもたちの思い出に残る花火大会

NPO法人まちづくりネット東近江「Memorialひがしおうみ大花火大会」
https://hmachinet9.wixsite.com/kodomoniyume

コロナ禍によって小中学校の行事が中止となるなか、せめて卒業を迎える小学6年生と中学3年生に、友達との想い出に残る機会を提供したいと考えた有志が実行委員会を結成。東近江の中間支援団体「NPO法人まちづくりネット東近江」が、資金集めの管理と、密を避ける7か所からの大花火大会の配信を担いました。

市内7か所で花火同時打上げを行い、会場には卒業生だけを招待。卒業生以外の子どもも含めて誰もがオンラインで視聴できるよう、地元企業とも協働し、各地をスマホとドローンのカメラで繋ぐYouTubeライブ配信を行いました。

この企画にあたっては「子どもたちに最高の思い出を」という思いのもと、東近江市の社会貢献団体、事業者、まちづくり協議会や各種団体の皆さんが、組織の垣根を越えて一致団結して進められたほか、市民の皆さんからも1,000万円を越える温かい寄附が集まりました。

審査員のコメント

いろんな人を巻き込み、一緒に作って実行できたことが何より素晴らしいと思います。クラウドファンディング、ドローンによる撮影、同時中継など、どれも特別珍しいものではありませんが、各会場運営や資金獲得などにうまく組み合わせている点が特徴的です。

LINE botの活用で、地域イベントの密を回避

草津おみやげラボ「草津まち探検Webマッピング@水生植物公園みずの森」
https://kusatsumiyage.localinfo.jp/posts/25111610/

OpenStreetMapを活用したツール開発などによって地域と子どもをつなぎ、草津の魅力情報を共有しあう市民プロジェクト「草津おみやげラボ」が、対面でのワークショップが難しくなるなか、LINE botを活用した密回避のイベントを考案しました。

会場にある案内板やアート作品をヒントに、クイズの答えをLINEに返信すると、予め用意されたbotが次のクイズと移動場所を案内してくれる仕組みです。これによって同じ時間に集まることなく、いつでも誰でも参加できるようなイベントが実現しました。

審査員のコメント

スキルの高い方と一緒になって、ソーシャルディスタンスが可能なイベントを考えた点が魅力的です。LINE botを使った宝探しのまちあるきは、実際に子どもたちが楽しんでくれそうで、かつプログラムの知識も要らないため、他地域でも広がってほしい取組みです。

 

自分のスキルを生かして、便利な仕組みを構築する

プログラミングを勉強しながら、自分が欲しいと思えるコロナ対策サイトをつくる

さらだぼぉる「[非公式]滋賀県コロナまとめサイト」
https://stopcovid19-shiga.jp

新型コロナの感染情報について、不確かな情報が拡散されるなか、県のコロナ対策公式サイトを見にくいと感じた高校生が、自らプログラミングを勉強しながら、自分が必要と思うデータを集め、また自分が分かりやすいと思う見せ方を考え、アイコンやグラフなどを用いて表現するサイトを構築しました。

試行錯誤を繰り返しながら、2回のリニューアルを経て、現在もカンパを募りながら自主運営を続けています。県内では約3万人の方がアクセスしており、総閲覧数は25万回を超えるサイトになりました。

審査員のコメント

滋賀県公式のコロナ対策サイトありきでなく、自分が欲しい情報を見れるサイトを作ったことはシビックテック的であり、素晴らしいと思いました。社会に対する思いや、自らスキルを高めながらさらに挑戦していくという姿勢が、頼もしく感じました。

高校卒業の思い出につくった、LINEで参加できるモザイクアート

井上陽介
https://qiita.com/inoue2002/items/12b315241d9c06fe196f

文化祭もなくなってしまい、その他行事も制限や中止されていくなか、卒業を控えた玉川高校の高校生(当時)が、物理的な距離は離れていても、一緒に作品を制作した達成感を味わうことのできる試みを行いたいとLINEを用いたモザイクアートの制作を考えました。

高校生らが卒業までの3年間で撮った思い出の写真をLINEで投稿しあい、蓄積された写真データから自動的にモザイクアートができる仕組みを構築。参加ハードルの低さから、たくさんの同級生が参加しました。学校の理解も得られるほか、3年間学校行事の写真を撮っていた地元の写真屋さんも協力し、8000枚もの写真が集まりました。

完成したモザイクアートは印刷して卒業生に配るほか、最後の学年集会でスクリーンにて披露。受験生にとってもあまり時間を割けない時期であるなか、卒業生のよい思い出をつくることができました。

審査員コメント

何よりも本人が楽しみ、ICTを学校や同級生らのために役立てたという姿が印象的で、全国の模範となり得る素晴らしいプロジェクトだと感じました。ICT技術もさることながら、いろんな人との調整、コミュニケーションを怠ることなく、最後まで推敲した、その勢いに圧倒されます。コロナ禍で始めた取組みですが汎用性を感じます。

地域のテイクアウトメニューをネット注文できる仕組みを構築

中野龍馬「湖南市みんなの夏祭り」
https://konyan.shop/order

コロナ禍で開催できなくなった地元の夏祭りを、オンラインを活用して楽しめるようにしたいと考えた民間有志が「湖南市みんなの夏祭り」と題したプロジェクトを立ち上げました。湖南市内の飲食店や決済サービスなどの協力を得て、公式サイト経由で各店舗のテイクアウトが注文でき、夏祭り当日にフードを受け取って自宅で楽しんでもらえるイベントの仕組みを構築しました。

2020年に行われた試みは大成功し、2021年もほぼ同じ仕組みで実施。200食以上のテイクアウトの注文につながり、湖南市内におけるネット注文によるテイクアウト需要の掘り起こしに大きく寄与しました。

審査員のコメント

コロナ禍で中止するよりも、それを契機に工夫・努力して新しい仕組みをつくる姿勢が伝わります。また単に自らのスキルでサイトをつくるだけでなく、裏方の人が取り組みやすいよう敢えて汎用的なCMSを導入したり、大学生がイベント会長となれるよう次世代に引き継ぐなど、地域のみんなで持続的な運営を行える工夫が素晴らしいと思いました。