9月12日。今日は参加者が(オンラインながら)一堂に会する6日間ぶりのワークショップです。
しかし各チームはこの間も毎日オンラインで洞察や分析を続けていました。彼らがこの日まで行っていたのは、初日に行った業務ファイルの分析や、2日目に行った観察・インタビューの結果を踏まえて、お題となる業務のどのポイントに着目するのか、その問い(仮説)を立てる作業でした。
ZoomやSlackだけでなく、miroやQuipなどのリアルタイムナレッジ共有ツールを活用することで、各メンバーがフラットに情報を整理し、考えを発散し、着目すべきポイントに集約します。
その過程で、チームによってはCO2ネットゼロ推進課の職員に再度インタビューを試みるところもあったり、
データ収集に関わる別部署の担当者にインタビューを試みるチームもありました。
果たして各チーム、お題となる業務のどのポイントに着目し、どのような問い(仮説)を立てられたでしょうか。チームaからdまで、それぞれ10分で発表していただきました。
チームa
チームaが着目したのは、「環境にやさしい県庁率先行動計画」の業務によって取りまとめられる電気・灯油・ガス・紙・公用車のガソリン使用量、及びチェックシートなどといったデータの集計方法や、そのフィードバックの仕方についてでした。
現在でもこれらのデータは庁内の環境意識改革に活用しようとCO2ネットゼロ推進課でまとめられているのですが、その集計方法を自動化し、数値化された目標設定に改善することが、「やらされている感」のない環境意識改革に繋がるのではと考えたようです。
また、集計結果は報告書や庁内研修により職員にフィードバックされているそうですが、意識改革には不足と考え、例えばトイレでよく見かける「便器の蓋を閉めましょう」という張り紙のように、常に人々に意識させられる機会で集計結果のデータを活用できるようなフィードバックのアイデアを、現在チームaでは検討しているとのことです。
チームb
チームbも「環境にやさしい県庁率先行動計画」の業務を対象に取り組んでいます。このチームではまず問題意識やその優先順位について議論しあった後、ズレがないようにその考えを図示化することで、チームの方向性を確認していました。
その上で、当初は集計の作業時間やその業務量そのものにスコープを設定していたのですが、インタビューの記録や資料の整理を通じて、「作業から思考・試行へ」というコンセプトを立てたそうです。
ただ集計作業の改善を行うのではなく、考え、試してみるという流れを回すための改善を考える。自動化集計によって作られたデータを見るその視野は広くて多角的なほうがよいわけですから、例えばオープンデータのように開放することで知見を広げるものにできないかなど、まずは視野の風呂敷を広げ、県民や事業者が利を得られるようなモデルを考えているとのことでした。
チームc
チームcでは「“しがCO2ネットゼロ”ムーブメントの推進・取組みへの賛同者募集」の業務を対象に取り組んでいます。業務を聞いてすぐに思いつくのはWebやFAX、紙といった異なるフォーマットで送られてくる賛同者情報のリスト集計作業の効率化ですが、実際に担当職員へインタビューしてみると、ものすごく煩雑というわけではなく、作業を自動化するだけでは大きな効果に繋がらないのではと考えたそうです。
そこで本当の課題を探ろうと、このチームでは日を改めて担当者に再度インタビューを行い、この業務に関して他に取り組んでいることや問題意識等を詳しく尋ねることにしました。そのうえで着目しようと考えたのが、「賛同書のわかりやすさ」「事業を盛り上げるための発信・周知」「行動につなげるデータ活用」の3点でした。
例えば「賛同書のわかりやすさ」については、賛同書のフォーマットが事業者も大人も子どもも全て同一のものになっていることに注目し、属性別に分けたデザインにする等できないか考えたそうです。そのうえで、ある属性に対して、賛同から行動・フィードバックまでの一気通貫の取組みができないかを検討しているとのことでした。
チームd
チームdの取組みも「“しがCO2ネットゼロ”ムーブメントの推進・取組みへの賛同者募集」の業務についてです。ここもチームcと同じく、単なる集計の自動化ではなく「行動にどう繋げるか」ということに問題の焦点を当て、「自分事化」という言葉をキーワードにしました。
そのうえで、「問題」の自分事化と「取組み」の自分事化という2つのサイクルが回っていないのではということ、また現状として自分事化の度合いと賛同者数が同一化していないのではという2点に着目し、その改善に繋がるアイデアを考えているとのことでした。
例えばイベントで得られる賛同のアクションとWebの申込フォームから得られる賛同のアクションの質は異なります。そういう点にも着目しながら、まず短期的に費用や時間のリソースを使わず試してもらえるようなアイデアを検討しているようです。
最終日に向けて
どのチームも共通して、
- 今回お題としている業務が「作業」になってしまっていること
- 単にその作業負荷を軽減するだけではあまり効果がなさそうだということ
の2点について問題意識を持っているようです。そのうえで、CO2ネットゼロという至上命題に対して、その業務や情報に関わる様々なステークホルダーがどのように主体的に関われるようになるか、そのためにデータそのもの、またその集計や活用のアクションを「再定義」しようと、各チーム独自のアプローチで模索しているような印象を受けました。
Tech Lake Sprint は、今日を境に後半戦へと移ります。後半はプロトタイプ(試作)をつくり、インタラクションやユーザー体験への理解を深め、アイデア(仮説)の検証を行っていただきます。検証結果から改善点を模索したり、そもそも決めた仮説が正しかったのかを確認し、必要に応じてピボット(方向転換)を行っていくプロセスです。
このプロセスで大事になるのは、何を検証したい(学びたい)のかを明確にすることです。プロトタイピングは承認のためではなく検証のために行うものですので、最初から完璧なものを時間をかけて作るのではなく、検証したい機能だけに特化したプロトタイプを時間やお金をかけずに作り、効率的に学びを得られるような後半戦にしていただけたらと思います。