滋賀データ活用LABの概要と、令和4年度のテーマ「健康」

 滋賀県地域情報化推進会議では、令和元年度からICT利活用検討部会(滋賀データ活用LAB)を設置し、企業や行政機関が持つデータが地域課題解決にどのような可能性をもたらすのか、テーマ別に研究を行うこととしています。

 令和元年度から2年度にかけては、「観光」「交通」分野のデータ利活用の検討を行い、令和3年度から4年度にかけては、「健康」分野のデータ利活用の検討を行いました。各企業からデータをご提供いただき、それぞれのデータについて、大学、民間企業、自治体に分析を依頼し、令和5年3月10日に開催した「滋賀データ活用LAB発表会」にて「健康」データの分析結果を発表(Web配信)しました。

利活用した「健康」データ

 令和3年度からの「健康」データ分析で利活用したデータは以下のとおりです。

  • 購買データ(提供元:スーパーチェーン店)
  • 体組成データ(提供元:健康機器メーカー)
  • 健診データ(提供元:各医療保険者)
  • 栄養素データ(提供元:医薬品・食料品等の製造・販売業者)

各機関からの発表

滋賀県立大学①「購買データと健診データの組み合せによる地域特性分析の一例」

 本発表では、購買データと健診データを用いて、出自の異なるデータを組み合わせた分析例を示しました。購買データと健診データを組み合わせて分析すると、各地域において僅かながら関連性がみられました。

滋賀県立大学②「鼻炎薬売上データの分析」

 本発表では、購買データを用いて、鼻炎薬の売上パターンを花粉飛散量、土地利用、他店売上によって分析を行いました。分析した結果、県内の店舗レベルでは、花粉飛散量や人工林面積率と鼻炎薬売上の相関は見られないようであることがわかりました。

滋賀県立大学③「体組成データの分析例のご紹介」

 本発表では、体組成データを用いて、データ間の相関や相関のネットワーク可視化を行いました。散布図等を用いて、データ利活用の手法についてお示しをいただきました。

滋賀大学①「健康診断の分析」

 本発表では、健診データを用いて、どうすればメタボリックシンドロームになりやすい人の傾向等をデータから分析していただきました。ロジスティック回帰を用いて、データから読み取れたこと、メタボリックシンドロームを防ぐにはどういうことが良さそうか、などを発表いただきました。

滋賀大学②「ID-POSデータを用いた販売傾向の分析」「体組成の集計データを用いた特徴量分析」

 購買データと体組成データを用いて、2つ発表をいただきました。
 購買データについては、ID-POSデータを活用して、特徴的な期間に着目して分析を行いました。特に、年末年始やお盆の期間に着目し、データから読み取れたことをご発表いただきました。
 体組成データについては、平均データから個別データの特徴を推定し、変数間の関係を偏相関係数によって調べました。COVID-19発生前後で各項目を調査してみると、一部の項目で相関や関係の変化を確認することができました。

滋賀大学③「生活習慣とメタボリックシンドローム判定に関する分析」

 本発表では、健診データを用いて、どのような因子がメタボリックシンドローム判定に影響を及ぼしそうかを分析しました。分析の結果、メタボリックシンドローム判定とされている人に多い傾向や、予防に関係のある手段をデータから読み取ることができました。

長浜市「健診データ、購買データを用いた健康課題・地域特性の分析」

 本発表では、購買データと健診データを用いて、健康に関して地域の偏りが見えないかや、食に関する健康課題のヒントを模索しました。健診データについては、睡眠分野で他の項目と相関がありそうなことがわかりました。購買データについては、購買傾向での相関を見つけることができました。
 また、今回のデータ利活用により見えた課題として、「データ取得方法」「データ分析ツールの確保」「体制・人材不足」等の課題を挙げ、今後のデータ利活用推進に活かすためのご提案もいただきました。

立命館大学「滋賀データ活用LAB最終発表会」

 本発表では、購買データを用いて、スーパーがメインターゲットにしたいユーザーに最適なクーポンを発行することを目的に分析を行いました。常連客度合い別の購買カテゴリの違いを見たり、商品カテゴリの推移を基にすることで、各層に効果的なクーポンを提案いただきました。

近江ディアイ株式会社「データ活用実施報告」

 本発表では、購買データを用いて、地域全体のデータ活用スキル向上を目的にBIツールを使用して分析を行いました。BIツールを使用して得られる図やグラフを実際にお見せいただき、データ利活用の手軽さを発表で示していただきました。また、今後のデータ利活用推進のための提案もいただきました。

まとめ

 日本におけるデータの活用は外国と比べると進んでいないと言われています。データの活用を進めるためには、データ共有を円滑に行うための枠組みの構築が一つの方策として考えられます。枠組みの構築により、データ活用を今以上に活発化させることが期待され、今後各分野での取組発展を注視していく必要があります。
 また、オープンデータの活用拡大も期待されます。COVID-19の対策では、シビックテックによる活動に注目が集まりましたが、しかしながら、企業による活用はあまり進んでいないのが現状です。また、行政側で公開している利用可能なデータの種類が不足していたり、データ形式のバラつき等も指摘されており、これらがオープンデータ活用の妨げとなっています。
 このように、データ活用には様々な課題がありますが、滋賀県地域情報化推進会議ではデータ利活用推進のための活動を今後も続けていく予定です。